OUTBACKで生まれたちょっといいお話集

ある日、私が担当していたテーブルのブラジル人のお客様は・・・

名古屋栄

OUTBACKER | CHIHANEさん
2024 Vol.10 Episode21

 アウトバックはオーストラリアをコンセプトにしたアメリカのステーキ屋さんということで、アメリカなの?オーストラリアなの?とまず混乱するお店だが、名古屋栄店には、ブラジル人やフィリピン人のお客様が多く来店されるので、もっと分からない。どこの国かはさておいて、とりあえず海外の匂いがするお店であり、接客をしていると、たまに言葉の壁が立ちはだかる。
 ある日、私が担当していたテーブルのブラジル人のお客様は、サイドメニューがわからなくて困っていた。マッシュポテトがどんなだか分からないらしい。「ポテトを潰したものです。」と説明するが伝わらない。「簡単な日本語で言ってくれ。」と言われても、すり潰すってどう簡単に言えばいんだ?潰すと壊すって違うよな?頭の中は混乱していたが、なぜか体が咄嗟に動いた。両手で、拳と手の平を叩き合わせて、何かを潰すジェスチャーをしながら、「マッシュド、マッシュド、ポテト」と伝えてみると伝わった。お客様はこのジェスチャーが気に入ったらしく、笑いながら私の動作を真似して繰り返し、「プレ」というポルトガル語を教えてくれた。後で調べてみたら、ポルトガル語でマッシュドポテトのことは、Purê de batataと言うらしい。お客様は二つ目のサイドに「プレ」(叩き潰すジェスチャーと共に注文)をゲットし、私はマッシュポテトのポルトガル語とボディランゲージの偉大さを知ることができた。
 サーバーが注文を正確に取り、キッチンに伝え、その通りの料理がテーブルへ提供されることが、飲食店の基本であると思うが、初めのステップもこのお店では侮れない。しかし互いに話す言葉が違うというのも、なかなか面白みがある。注文をとるという単純なことでもトラブルがある一方、笑いや学びが生まれることもあるのだ。