これは私がバーカウンターで出会ったお客様とのお話です。
　高輪店には広いバーカウンターがあります。私は主にバーテンダーをしていて、そこで3年ほど前に出会ったお客様がいます。彼の名前はClay。日本の航空会社でパイロットをしているアメリカ人の方でした。　私の拙い英語でも優しくコミュニケーションを取ってくれて、いつしかハイタッチで挨拶をするようになりました。彼は週に1、2回の頻度で来店されていて、バーテンダーならみんな知っている常連さまでした。ハロウィンやクリスマスには、彼から「プレゼントだよ！」とチップを頂いたりすることもありました。彼の好みはもちろん覚えていて、座ったらまずキリン一番搾り。そしてブルーチーズソースのサラダ(オニオン抜き)、クッカバラチキンウィング(辛さホット)をご注文されます。時にはパイロット仲間を連れて来店してくださり、とても気さくで優しい方でした。
　コロナ感染の影響で高輪店が休業することになり、しばらく会えなかった時期もありましたが、再開したらすぐに来てくれました。そして知らされました。「今月アメリカに帰るんだ。向こうで新しい航空会社で働くから、日本からいなくなるんだ。」と。とても寂しい気持ちになりましたが、彼の選択を応援したい気持ちもあり、同じアウトバッカーのGucchiさんとサプライズをすることにしました。彼が最後に来店された日に、英語で書いた手紙と、日本語で名入れをしたお箸を贈りました。とても喜んでくれて私まで嬉しくなり、なんだか最後だという感じがしませんでした。最後の日もいつもと同じように螺旋階段の下でお見送りをした時には、またすぐ会えるのではないかと思わせてくれるくらい、最後までフレンドリーで優しい方でした。
　バーでバーテンダーをしていなかったら出会っていなかったと思うと、私をバーテンダーに選んでくださったマネージメントの方々、いつも私がバーテンダーができるよう支えてくれるアウトバッカーのみんなに、感謝の気持ちでいっぱいです。彼のようなお客様との出会いをこれからも大切にしていきたいと思います。