OUTBACKで生まれたちょっといいお話集

別に、若さに憧れてサバ読んでいる訳ではない。

梅田

OUTBACKER | YOSHIHISAさん
2026 Vol.12 Episode26

 僕は18歳からアウトバックで働いている。30歳を過ぎた頃から、自分が今何歳なのか、正確に分からなくなる時がある。別に、若さに憧れてサバ読んでいる訳ではない。ただ単に、年齢に対しての興味があまりないのであろう。今は30代後半だということはかろうじて分かる。
 18歳の時に幕張店でアルバイトをしていた頃から、10数年来のお付き合いがある、福地さんというご夫妻がいる。長いお付き合いなので、僕は少年からおじさんに、福地さんご夫婦はおばあちゃんとおじいちゃんになった。福地さんは千葉県の市川に住んでいるので、元々は市川店の常連さんだった。市川店が閉店してからは、幕張店に通ってくださるようになり、そこで何度か担当をさせてもらっていくうちに仲良くなった。
 福地さんご夫婦は京都旅が趣味で、この数年は一年に何度も京都旅行に来ている。その度に、「ヨシさんの顔を見に。」と言い、大阪には何も用がないのに、わざわざアウトバックで食事をするためだけに、梅田店にいらしていただいている。
 そんなある日の福地さんとの会話である。
 「ねえ、ヨシさん、なんで私たちとヨシさんが仲良くなったか覚えてる?」、 「え?ずいぶん昔のことだからよく覚えていませんよ。なんでしょうか?」、 「ヨシさんがお礼のハガキをくれたことがきっかけなのよ。それが嬉しくてねえ。」
 予想もしていなかった、まさかの答えだった。忘れかけていた過去の記憶。10代後半のただのアルバイトであったヨシヒサ少年は、東急ハンズで洒落た絵ハガキを買い、仲良くなったお客様に、汚い字だが手書きでメッセージをしたため、可愛らしい切手を貼って送っていたのだ。誰にやれと言われたわけでもない。自分が好きで勝手にやっていたことだ。もちろん経費ではなく、すべてポケットマネーだ。あの頃は、とにかくサービスが楽しかった。お客様に喜んでもらえることが喜びであった。アルバイトから社員になって、理想と現実の狭間で、もがき苦しむうちに忘れかけていた、この気持ち。そういえば、研修講師の加藤先生もことあるごとに、小川さんと初めてお会いした後に、お礼のハガキを送ってくれたことがすごく印象に残っている、という話を何度もしてくださっていた。
 福地さんとの会話がきっかけで、私は原点に立ち返ることができた。今でもハガキはもちろん、メール、ライン、インスタなどで、たくさんのお客様と連絡をマメに取り合っている。その中には、店員とお客様という垣根を超えた関係を築けている方も何人かいる。そういうお客様は、僕にとっての宝物だ。1枚のハガキが繋いでくれたかけがえのないご縁。僕は決して忘れないようにしたい。すべては1枚のハガキから始まったということを。