アウトバックで働き始めてから今日までの時間の中でのことだ。
自分が笑顔でいれば相手も明るくなる。自分が暗ければ相手の表情も曇る。人は人から影響を受ける。そんなことを実感できたのは、アウトバックで働き始めてから今日までの時間の中でのことだ。
私は大学2年生の10月に、このアルバイトを始めた。周りの人たちは、
大学1年生から続けている人が多く、比べると始めるのは遅い方だったのかもしれない。それまで私は、ピザのデリバリーや居酒屋のキッチンなど、人と面と向かって接客する仕事を避けてきた。デリバリーでは、目的地についてからピザを忘れたことに気づき、店舗に取りに戻ったことや、キッチンでは卵焼きを焼きすぎて、フライパンを茶色に焦したことがある。そんな実績を積んだうえでの新しいアルバイトだった。
これまでのバイトは、5分前に原付の持ち手をひねれば間に合った。しかしここは違う。1時間前に家を出てチャリに乗り、電車に揺られ、駅に群がる人と人をかき分けてかろうじて間に合う、池袋のビルの7階にある店舗に面接を受けに行った。店内は思っていたより3倍もフロアが広く、2倍も天井が高く、想像通りラグジュアリーな雰囲気に包まれていた。
面接を終えた後日に合格のメールが届き、次は“レクリエーション”と呼ばれる研修に参加することになった。その“レクリエーション”という楽しそうな言葉の響きに反して、マネージャーの人から広辞苑のようなルールブックが渡され、これまでスポーツしかしてこなかった私は、赤本を背負った受験生のような気持ちで家に帰った。
覚えることがあまりにも多く、頭を抱えたまま迎えた1日目のトレーニングで、初めて他のスタッフと対面した。すると「おはよう!よろしくね。」と、一人ずつ笑顔で挨拶をしてくれて、つられるように元気よく返した。彼らは全員、自信に満ちた表情で楽しそうに接客し、肩より上に料理を持って運んでいた。今まで人と関わるアルバイトを避けてきた私にとって、その姿は逞しく、かっこよく、この仕事にやりがいを感じているように見えた。赤本を開いていた自分は、「この人たちの一員として働きたい。」と心から思った。
やがてトレーニングを終え、いざ独り立ちの時、冬だったにもかかわらず、緊張のあまり、体中から汗をかいていた。空調設備を疑いながらも、お客様への挨拶に向かった。だが、想像していたようにはいかず、強張った自分の顔に合わせるように、お客様の表情も明るくはなかった。それを見ていた社員の方が、「緊張しすぎだよ。自信を持って明るくやれば、お客様も受け入れてくれるよ。」と笑顔で背中を叩いてくれた。どんなに緊張していても、自分はこの店のスタッフの一人。たとえ表情筋が固まっていても、明るく振る舞うことが接客には大切だと、その時感じた。
それからは、どんなお客様にも明るく丁寧な接客を心がけ、あの頃トレーニングで見ていた先輩たちに、少し近づけたような気がする。かっこいい先輩たちに影響され、私もお客様に明るい雰囲気を共有していく。そんな良い連鎖が、このアウトバックの店舗には常にあるのだと思う。
それ以来、プライベートでも“人は写し鏡”であると意識するようになった。人見知りの自分にとって、それは人と関わる上で大切な拠り所になっている。これからは、自分が誰かの“良い鏡”になれるように、さらに成長していきたい。
