“ひたむきな姿勢は人に伝わる”ということを改めて教えてもらったことがあった。
“ひたむきな姿勢は人に伝わる”ということを改めて教えてもらったことがあった。
11月の金曜日、30名様程の団体予約を、勤務歴が1年に満たない大学1年生と、トレーニングを終えたばかりのルーキー2名で担当してもらう、チャレンジングなロースターを組んだ。大学1年生のアウトバッカーはTSUBASA、彼とペアを組んでもらったのがルーキーのKEITARO。TSUBASAは大学1年生ながら、視野も広く安定して頼りになるサーバーなので、KEITAROへ宴会の経験を積んでもらう目的もあり、2人にお願いすることにした。
宴会もスタートから滞りなく進み、どのお客様も楽しそうに過ごされていたので、安心して2回転目に備えて準備を進めようとしていた時、フロアから嫌な音が聞こえた。何回聞いてもその瞬間、「あ、やったな。」と分かるグラスが倒れる音と、お客様の悲鳴に近い声。すぐに向かうと、KEITAROがテーブルと上着を申し訳無さそうに拭いていた。こうなってしまっては、自分が出来る事は決まっている。お客様とアウトバッカー双方に寄り添うこと。
お客様への対応を一旦終え、上着をお預かりし乾かしている間に、TSUBASAとKEITAROへ進捗を説明し、そのまま担当として接客できるかを聞いてみた。2人とも申し訳なさそうではあったが、最後まで担当したい、お見送りまでしたい、と言ってくれた。実は、お客様からは、「飲食店あるあるだから気にしないでよ。むしろあの2人は本当に一生懸命やってくれていたから、そんなに怒らないであげてね。」と仰っていただいていたので、担当を変えるつもりはなかった。
上着をお返しし、お客様が帰り支度をしている様子を、KEITAROが不安そうな顔で見ていたので、何かしたいことはあるか尋ねた。「ちゃんと謝りたいです。」と伝えてくれたので、最後のご挨拶にも彼を同行させた。KEITAROは真っすぐお客様の目を見て、「先程は本当に申し訳ございませんでした。」と頭を下げた。お客様も同じく真っすぐKEITAROの目を見ながら、「大丈夫だよ。アルバイト大変だと思うけど、頑張ってね。KEITARO、絶対に辞めるなよ!」と、名前を呼んで声をかけてくださった。
きっと、彼のサービスはベテランに比べれば、まだまだ稚拙で行き届かない点もあっただろう。だが、間違いなくお客様には、何か伝わるものがあった。そうでなければ名前で呼んでくださることもなく、失敗に対してあれほど大らかでいられるはずがない。
螺旋階段を登っていくお客様を、何度も深く頭を下げながらお見送りする2人を見て、ぐっと涙を堪えていたのは、彼らがアウトバックを巣立っていくまで内緒にしておこう。
